英語が難しいと言われる6つの理由

英語教育・学習

中学・高校と何年も英語を勉強したのに、いざ会話になると言葉が出てこない。多くの日本人が経験する悩みです。そして多くの人が、自分の才能や努力の量を疑い始めます。

しかし、多くの場合、疑うべきは自分ではありません。英語が難しいのは、あなたの能力の問題ではなく、日本語と英語があまりにも違うからです。この遠さは感覚の話ではなく、データで確かめられています。まず、その正体から見てみましょう。

英語が難しい一番の理由:日本語と英語の「距離」

世界の言語は、同じ起源を持つもの同士が似通っています。例えば、フランス語とスペイン語は、どちらもラテン語に由来しているため、似ています。英語はゲルマン語派に属し、ドイツ語やオランダ語と起源を共有しています。そのため、これらの言語を話す欧米人にとって、英語は比較的学びやすいのです。

しかし、日本語は全く異なる起源を持っています。日本語に最も近い言語は琉球諸語 (奄美群島から沖縄、宮古、八重山、与那国)で、英語との間に共通の起源がありません。単語も、文の組み立ても、音も、日本語と重なる部分がほとんどありません。

アメリカ国務省のFSI(外交官などに語学を教える機関)は、英語を母語とする学習者が各言語を仕事で使えるレベルまで習得するのに、どれくらいの授業時間がかかるかを推定しています。スペイン語やフランス語なら、およそ600〜750時間です。一方、日本語はアラビア語・中国語・韓国語と並ぶ最難関グループに入り、目安は約2,200時間。スペイン語の3〜4倍かかります。

FSI(米国務省)の推定による言語難易度の棒グラフ。英語話者が専門職務レベルに達するまでの授業時間は、スペイン語が約600〜750時間、ドイツ語が約900時間、ロシア語が約1,100時間、日本語が約2,200時間。日本語はスペイン語の3〜4倍で、最難関のカテゴリーIVに入る。

この時間は「英語話者が学ぶ場合」の推定です。

上の図の時間は「英語話者が日本語を学ぶ場合」のものです。では、逆方向はどうでしょうか。つまり、日本人が英語を学ぶ場合です。

経済学者のBarry ChiswickとPaul Millerは、このFSIの成績データを「言語の距離」の物差しとして使い、アメリカ(約48万人)とカナダ(約3万人)の国勢調査データで検証しました(Chiswick & Miller, 2005)。その物差しの上で、日本語は韓国語と並んで、43言語の中で英語から最も遠い言語でした。そして分析の結果、母語が英語から遠い移民ほど、学歴や滞在年数などの条件が同じでも、英語の習得度が低いことがわかりました。例えば、カナダに住んで5年たっても、日本語や韓国語を母語とする男性移民の約25%は、英語(またはフランス語)で日常会話ができませんでした。英語に近い言語を母語とするグループでは、約5%でした。

ですから、ヨーロッパの人が英語を半年で身につけるのを見て、落ち込む必要はありません。スタート地点がまったく違います。「英語が難しいと思い込んでいるから難しくなる」という説明もよく見かけますが、気の持ちようの問題ではありません。違いが大きいから、時間がかかる。それだけのことです。そして、理由がわかれば対策も立てられます。英語の違いが、具体的にどこで表れるのかを見ていきましょう。

6つの理由の前に:英語は「寄せ集め」でできた言語

英語の難しさには、共通の背景があります。英語そのものが、いくつもの言語の寄せ集めでできている、ということです。土台は、5世紀ごろにブリテン島へ渡ったゲルマン系の言葉でした。そこへ、バイキングが古ノルド語を持ち込みます。1066年のノルマン征服の後は、支配層の言葉としてフランス語が流れ込みました。さらに、学問と教会の言葉だったラテン語とギリシャ語。英語はこれらを整理せず、ほぼ全部抱え込みました。

この歴史の一つ目の結果が、単語の多さです。近い意味の単語が、出どころ別に何重にも重なっています。「自由」なら『freedom』(ゲルマン系)と『liberty』(フランス語系)。「始める」なら『begin』と『commence』。しかも層によって出番が違い、ゲルマン系は日常の言葉、フランス語・ラテン語系は改まった言葉になりがちです。英単語を覚えるというのは、この積み重なった層ごと覚えることでもあります。

二つ目の結果が、つづりと音の混乱です。借りてきた単語は、それぞれの言語のつづりの習慣ごと入ってきました。そのうえ、発音は時代とともに変わり続けたのに、つづりは古い形のまま残りました。つづりと発音がかみ合わないのは、このずれの積み重ねです。音そのものも増えています。例えば v は、もともと英語の中では f の変種にすぎず、独立した音ではありませんでした。『venom』や『virtue』のような v で始まるフランス語の単語が大量に入ってきたことが、f と v を別々の音として定着させる大きな後押しになったのです(Gąsiorowski, 2005)。

三つ目の結果は、文法です。昔の英語(古英語)は、今のドイツ語のように語尾が細かく変化する言語で、語順は今よりずっと自由でした。ところが、その複雑な語尾は時代とともにすり減って消えていきます。語尾の弱まり自体は古英語の頃から始まっていましたが、歴史言語学では、バイキングとの混住がこの変化を早めたという説明が有力です(McWhorter, 2002。個々の変化については慎重な再検証もあります。Allen, 2023)。実際、語順に関わる新しい特徴は、バイキングが住み着いた北の方言から現れたことが指摘されています(Kroch, Taylor & Ringe, 2000)。語尾という目印を失った英語は、代わりに語順で意味を示すようになります。今の英語の「語順が命」という性格は、この歴史の産物です

つまり、英語の難しさは一枚岩ではありません。寄せ集めの歴史が、単語・つづり・音・文法のそれぞれに、別々の形で顔を出しています。ここからの6つの理由は、その表れです。

日本人にとって英語が難しい6つの理由

英語が難しい理由1:発音・綴り

英語では同じようなスペルの単語が異なる音で発音されることがよくあります。例えば、『through』、『though』と『tough』は似ていますが、発音が大きく異なります。

下の音声ボタンを押して聞いてみてください。

『through』(〜を通って)

『though』(〜だけれど)

『tough』(つらい・頑丈な)

これらの違いに耳を慣らすには、ある程度の時間が必要でしょう。極端な例では、『colonel』(大佐)は「カーネル」と読みます。綴りと発音が、ここまで離れることもあるのです。逆に、同じ音を表すのに何通りもの綴りが使われることもあります。ローマ字のように文字と音が素直に対応する書き方に慣れていると、なおさら理不尽に感じるはずです。

音そのものの数も違います。英語には通常(分類の仕方や地域によって多少異なることがありますが)44の音素がありますが、日本語には約22の音素しかありません(Kavanagh, 2007)。ですから、日本語に存在しない音素に慣れる必要があります。

音素とは: 言語の最も小さな音声単位のことです。例えば、「t」は英語の音素(phoneme)の一つです。こちらのリンクから英語の音素を聴いてみてください。

日本語には存在しない英語の音をいくつか紹介します。また、似た音を聞き分けなければいけないことも、英語が難しい要因です。/θ/ や /ð/ などは IPA(国際音声記号)のことです。

TH音とS音 /θ/と/s/ とその違い
/θ/ は日本語には対応する音がなく、「サ」行や「ス」行に一番近いです。TH音とS音は混同されがちです。
thick』(厚い)と『sick』(病気の)
thank』(感謝する)と『sank』(沈んだ)

別のTH音(/ð/)
/ð/ も日本語にはなく、「ザ」行や「ズ」行に一番近いです。
this』(これ)『that』(あれ)

/æ/(短母音)
日本語にはない音で、日本人には「ア」や「エ」と混同されがちです。
『cat』(猫)や『bat』(コウモリ)

/ə/(シュワ)
日本語には対応する音がありません。
『sofa』(ソファ)『about』(〜のこと)『support』(サポート)

W音 /w/
日本語の「ワ」とは異なる発音です。
wet』(濡れる)『win』(勝つ)

R音とL音 /r/と/l/ とその違い
英語の「R」と「L」の音は、日本語の「ら行」とは異なります。また、「R」と「L」の違いを聞き取ることは簡単ではありません。
right』(右)と『light』(光)
rake』(熊手)と『lake』(湖)

実は、大人の日本語話者にとってRとLの聞き分けが難しいことは、研究でも繰り返し確認されています(Goto, 1971/Miyawaki et al., 1975)。日本語ではこの2つを区別しないので、日本語で育った脳には、この違いを聞き取る必要がなかったのです。ですから、聞き取れないのは耳や努力のせいではありません。改善できるかどうかは、記事の後半の「よくある質問」で紹介します。

B音とV音 /v/と/b/ とその違い
「V」の発音は日本語には存在しません。また、「B」も「バ行」と同じではありません。「B」と「V」の音も混同されがちです。
bat』(バット)と『vat』(大桶)
berry』(ベリー)と『very』(とても)

F音とH音 /f/と/h/ とその違い
「F」の音も日本語には存在しません。「H」は「は行」に似ていますが、微妙に違います。
fan』(扇風機)と『hand』(手)
fat』(太った)と『hat』(帽子)

I音とE音 /ɪ/と/e/ とその違い
英語の「I」と「E」の音は、日本語の「イ」と「エ」に似ていますが、正確には異なります。これらも混同されがちです。
『pin』(ピン)と『pen』(ペン)
『sit』(座る)と『set』(置く)

音とつづりの対応をルールから学び直したい場合は、フォニックスの記事にまとめています。子ども向けと思われがちですが、大人のやり直しにも効きます。

英語が難しい理由2:リズムの違い(英語が「速く」聞こえる理由)

単語は知っているのに、ネイティブの英語が速すぎて聞き取れない。そう感じる大きな原因は、単語力ではなく、リズムの違いにあります。

日本語は、かな一文字ぶんの「拍」をひとつずつ、同じ長さで刻む言語です。一方、英語は強く読む部分を中心にリズムを作り、弱い部分は短く飲み込んでしまいます(Ramus et al., 1999)。例えば、『Tokyo』は日本語では「と・う・きょ・う」の4拍ですが、英語では「トウ・キョウ」の2音節で、前半を強く読みます。強いところは長く、弱いところは一瞬。だから日本語の耳には、英語が「急に速くなって、音が消える」ように聞こえるのです。

また、英語は単語と単語をつなげて発音します。例えば、『an apple』は「アン・アップル」ではなく「アナップル」のように聞こえます。知っているはずの単語が聞き取れないのは、単語を知らないからではなく、単語の切れ目が日本語の感覚とずれているからです。

なお、言語のリズムをきれいに分類できるかどうかは、研究者の間でも議論が続いています。それでも、英語と日本語のリズムが大きく違うこと自体は、聞き比べれば分かるとおりです。リスニングの練習では、単語より先に、このリズムに耳を慣らすことをおすすめします。

3:膨大なボキャブラリー

英語は、単語の数がとにかく多い言語です。しかも、一つの単語にいくつもの意味があったり、文脈で使い方が変わったりします。例えば、『run』は「走る」のほかにも多くの意味を持ちます。『She runs a business.』(彼女はビジネスを運営しています)、『The river runs through the city.』(川が街を流れています)。単語帳の1行目だけ覚えても、実際の文では別の意味で出てくるのです。学んでも学んでも新しい単語に出会うので、終わりがないように感じるかもしれません。

日本人には、もう一つ不利な点があります。ヨーロッパの学習者は、母語と英語に同じ語源の単語が何千とあるため、初めて見る単語でも意味の見当がつきます。日本語には、その足がかりがありません。カタカナ語があるじゃないか、と思うかもしれませんが、カタカナ語は意味がずれて定着しているものがよくあります。例えば、『mansion』は「豪邸」で、日本語の「マンション」ではありません。『smart』は「賢い」で、体型の「スマート」ではありません。

しかし、不安になる必要はありません。毎日使う英単語の大部分は、実は限られた範囲に収まっているからです。よく使われる単語から順に覚えれば、少ない語数で理解できる範囲が一気に広がります。また、新しい単語は丸覚えするのではなく、文脈の中で使い方ごと覚えるのがおすすめです。

4:複雑な文法(例外、語順の違い、冠詞と主語の必要性)

英語の文法は、習得を難しくするクセに満ちています。例えば、英語には、名詞にいくつかの形容詞が連続する場合に、どの形容詞を最初に使うかについてのルールがあります。『a small red bird』は自然ですが、『a red small bird』は伝わるものの、不器用な表現になってしまいます。英語の本『The Elements of Eloquence』によると、形容詞の順番は、意見、大きさ、年齢、形、色、起源、材料、目的の順にするのが良いとされています。

数え方にも例外があります。ほとんどの名詞はs、es、iesをつけると複数形になります。しかし、特別な複数形を持つ名詞もあります。『Mouse』は1匹のネズミですが、数匹のネズミは『Mice』と言います。一方、家は『House』、複数の家は『Houses』です。また、子牛は『Calf』、複数の子牛は『Calves』です。

もっと根本的な違いは、語順です。英語は主語-動詞-目的語(SVO)の語順を使いますが、日本語は主語-目的語-動詞(SOV)の語順を使用します。

語順の違いの例を見てみましょう。「私の友達は昨日ケーキを食べた。」と言いたいとします。

不正確な例(日本語の語順をそのまま英語に当てはめたもの): Yesterday, a cake ate my friend.

この文は、英語の語順としては不正確です。「昨日、ケーキが私の友達を食べた。」となってしまいます。正しい語順に直すと次のようになります。

正確な例: My friend ate a cake yesterday.

さらに、英語には冠詞(a, an, the)があり、これが日本語には存在しないため、日本人にとって難しいポイントとなります。冠詞のない英文の例を見てみましょう。

不正確な例: friend bought me pizza at supermarket.

この例は、冠詞などが欠けているため不自然です。『friend』の前には『my』や『a』が、『pizza』と『supermarket』の前には『a』や『the』が必要です。

正確な例: My friend bought me a pizza at the supermarket.
「私の友達がスーパーマーケットでピザを買ってくれた。」

また、英語では主語が必須です。日本語では主語を省略しても文が成立しますが、英語では主語を明らかにする必要があります。

間違いの例: Is hungry?
適切な英語: Is anyone hungry?「誰かお腹空いてる?」

間違いの例: Forgot to bring the umbrella. Got soaked.
適切な英語: I forgot to bring the umbrella. I got soaked.「傘を持ってくるのを忘れた。ずぶ濡れになった。」

たくさんの複雑なルールがありますが、完璧な文法を目指す必要はありません。たまに冠詞が抜けていたりしても、大抵は通じます。しかし、主語や語順を落とすと文が成り立たなくなるので、まずこの2つに気をつけましょう。完璧さにこだわると、話すことや書くことに対する自信を失いがちです。学びながら間違いを恐れず、どんどん英語を使い、たくさん間違えましょう。そして、間違えを放っておかずに、間違えから学びましょう。

5:イディオムの多さ

英語には多くの慣用句、つまり風変わりな言い方があり、それが理解を難しくしています。例えば、滅多に起こらない出来事を『once in a blue moon』と表現できます。「映画は滅多に見に行かない」は、『I only go to the movies once in a blue moon』となります。イディオムなしで言うと、『I seldom go to the movies』または『I rarely go to the movies』です。

他にも、いくつか紹介します。

こうした表現は数がとても多いので、一度に覚える必要はありません。時間に関する表現のように、テーマごとに少しずつ拾っていきましょう。

6:地域の違い

英語は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダなど、多くの国で話されています。これらの国々はそれぞれ独自のアクセントや表現を持っており、英語を学ぶ際には、こうした地域の違いにも注意が必要です。例えば、エレベーターのことをアメリカ英語では『elevator』と言いますが、イギリス英語では『lift』と言います。綴りも多少違う場合があります。アメリカ英語の『color』は、イギリス英語では『colour』と表記されます。

同じ言葉を使っても、意味が違う場合もあります。例えば、『pants』という単語は、アメリカ英語・オーストラリア英語では「ズボン」という意味ですが、イギリス英語では「下着」という意味になります。同じ単語なのに、国や地域によって意味が異なるため、混乱してしまうことがあります。

また、英語のネイティブスピーカーは、スラングや口語表現を多く使います。これらは学校の教科書にはほとんど載っていないので、実際の会話やメディアの中で少しずつ拾っていくものです。

もうひとつの理由:学校の英語は「話す」練習ではなかった

ここまでは言語そのものの話でしたが、もう一つ、別の種類の理由があります。学校の授業です。

日本の英語の授業は、長いあいだ「訳読」と呼ばれる方法が中心でした。英文を一語ずつ日本語に置き換えて、日本語の語順に並べ直して意味を取る方法です。英語教育の研究者Greta Gorsuchは、日本の高校の教室を観察し、この訳読が授業の中心だったことを記録しています(Gorsuch, 1997)。この授業では、英語を声に出して使う場面がほとんどありません。

文部科学省は1989年以降、コミュニケーション重視の方針を打ち出してきました。しかし、Gorsuchの2001年の調査のタイトルは『The Plan versus the Reality(計画と現実)』。文法と読解に偏った大学入試がある限り、授業もそこに合わせざるを得なかった、という報告です。この傾向の根強さは、その後の教室調査でも繰り返し指摘されてきました。

つまり、私たちの多くが学校で受けてきたのは「英語を日本語に変換する練習」であって、「英語を使う練習」ではありませんでした。変換の練習を何年積んでも話せるようにならないのは、当然の結果です。楽譜の読み方を何年も習った人が、初めてピアノに触って弾けなくても、不思議ではないのと同じです。

ただし、学校英語が無駄だったわけではありません。文法の知識と読む力は、すでにあなたの中にあります。足りないのは、音と、実際に使う練習です。ゼロからやり直すのではなく、足りない半分を足せばよいのです。

英語を学ぶための5つのヒント

やみくもに頑張るより、やり方を工夫したほうが早く伸びます。英語を上達させるためにできることを、5つ紹介します。

英語の発音を学ぶ(発音・リスニングを最優先)

英語の音を聞き分けられるようになると、会話だけでなく、英語学習のすべてが楽になります。私たちの耳と口は、母語の音に合わせてできあがっています。ですから、まずは英語の音に慣れ直すところからです。理由1と理由2で見たとおり、ここを後回しにすると、単語をいくら増やしても「聞き取れない・通じない」が続いてしまいます。

もちろん、ネイティブ並みの発音や耳を目指す必要はありません。日々の生活の中で意識して英語を聴き、聞いた音をそのまま口で追いかけてみてください。シャドーイングなら、耳と口を同時に英語に慣らせます。最近は音声認識アプリで自分の発音を確かめられるので、こうした道具も役に立ちます。

重要な語彙に集中する

英語には膨大な語彙があることはすでに述べました。早く語彙を増やしたい場合、出会う単語を全て覚えようとはしないでください。むしろ、最も有用な単語を知ることが先です。

最頻出リスト(2000語)とは、最もよく使われる語彙をまとめたものです。これらの単語は会話や文章で頻繁に使用されるため、短期間で実際のコミュニケーションに役立つ語彙力が身につきます。大量の単語を無計画に覚えるよりも、使用頻度の高い単語を集中的に学ぶ方が効率的です。中学英語の復習が効くとよく言われるのも、同じ理屈です。中学レベルの単語と文法こそ、日常の会話で使われる語の多くを占めているからです。

ただし、リストの単語も、例文や文章の中で出会いながら覚えていきましょう。

英文法の感覚やパターンを優先する

英語を早く習得したい場合、文法書の熟読や文法ドリルだけの学習はおすすめしません。もちろん、文法書やドリルも役に立ちます。必要に応じて使い、細かなルールも学べます。しかし、ほとんどの文法の形は、ネイティブスピーカーがどのように話しているかに注意を払いながら、パターンとして気づいていきましょう。読み書きのための細かい英文法は、後からでも身につきます。

英語のメディアにたくさん触れて、文法は体で覚えていくのがおすすめです。また、会話などで文法の間違いに気づいたら、そのままにするのではなく、その間違いをノートに書き込みましょう(スマホのノート機能も活躍します)。間違いを振り返ることで、意識的に文法を修正できます。

ネイティブスピーカーとたくさん練習する

英語を学ぶ一番の近道は、できるだけネイティブスピーカーと話すことです。生きた発音に触れられ、その場で直してもらえて、新しい表現も自然と増えていきます。どんどん間違えて、そこから学びましょう。間違いは失敗ではないと、別の記事にも書いたとおりです。ただし、決まったフレーズをオウム返しできるだけでは、予測できない実際の会話に対応できません。自分の弱点を狙って直していく練習の考え方は、限界的練習(デリバレート・プラクティス)の記事で詳しく紹介しています。

そもそも、多くの人は英語に触れる時間が少なすぎる、もしくは、学習の間隔を空けすぎています。精読や細かい文法の学習はインプットの量を極端に制限します。要するに、時間あたりの英語に触れる量が少なくなります。ですから、実際の英会話、多読、シャドーイングなどで英語に触れる時間を増やしましょう。

学習の間隔についても同じです。毎日コツコツ英語を使わず、週一回だけ長時間詰め込む方法では、記憶の定着が難しく、習得に時間がかかります。毎日少しずつ英語に触れる方が、記憶が定着しやすく、効率的です。最低30分、英語を読む、シャドーイングをする、YouTubeの英会話コンテンツを観るなど、日常生活に英語を取り入れましょう。通勤時間に英語のポッドキャストを聴く、寝る前に短い英語の記事を読む、という形でも構いません。日本で生活する限り英語に触れる機会は少ないと感じるかもしれませんが、実際にはインターネットを通じて豊富な英語リソースにアクセスできます。ですから、環境自体は、英語が難しい理由ではありません。

読む力をつけて、たくさん読む

練習の質も大切ですが、量も同じくらい大切です。たくさん触れるほど、表現や文法が体に馴染んでいくからです。

量を増やす最も簡単な方法は読書です。ただし、これは精読ではなく多読のことです。自分のレベルに合わせて、ほとんどの内容を理解できるものを読みましょう。理解できる範囲のコンテンツに触れることで、自信を持って学習を続けられます。読むスキルは他の場面でも役に立ちますし、読書という楽しみにも繋がります。

ヒントのまとめ

一つの学習方法に偏らず、以下のことを実践してみてください。

これらを英語の基盤作りと呼びましょう。基盤づくりを無視して英語を学ぼうとすると、遠回りな学習になってしまうケースが多々あります。長文の執筆、細かい文法の知識や低頻度な語彙の学習は、英語のレベルが向上してから取り組むことをおすすめします。英語の基盤があってこそ、もっとレベルの高い英語を使えるようになります。

子どもなら簡単?大人だと手遅れ?

子どものほうが有利な面は確かにあります。しかし、「大人だからもう手遅れ」は正しくありません。研究をもとに、正直に紹介します。

MITなどの研究チームが、約67万人という大規模なデータで、文法を学ぶ力が年齢とともにどう変わるかを調べました(Hartshorne, Tenenbaum & Pinker, 2018)。それによると、文法を学ぶ力はおよそ17歳あたりまでほぼ保たれ、その後ゆるやかに下がっていきます。一方で、母語話者に近いレベルまで届いていたのは、10〜12歳ごろまでに学び始めた人たちだった、とも報告されています。なお、この「17歳」という区切りには、もっとなだらかな低下だとする再分析もあり、細かい部分は議論の途中です(van der Slik et al., 2022)。

ここから言えることを、年齢帯で分けてみましょう。小学生くらいまでに英語の音にたくさん触れておくと、発音と聞き取りで有利になりやすいです。理由1で見たとおり、音の聞き分けは早い時期のほうが身につきやすいからです。一方、中高生以降や大人の場合、「ネイティブと同じ発音・訛りのなさ」という上限は下がりますが、学ぶ力そのものはしっかり残っています。仕事で通じる、読める、話せる、というレベルには、大人になってからでも十分に届きます。

お子さんをお持ちの方に、一つだけ。早く始めることが有利なのは本当ですが、楽しくない詰め込みで英語を嫌いにさせてしまうと、その後の伸びしろを丸ごと失います。早く始めることより、続けたくなる形で始めることを優先してください。歌や絵本や動画など、理解できて楽しいものから、細く長く。多読を子どもにもおすすめしているのは、そのためです。

よくある質問

英語は、世界でいちばん難しい言語ですか?

いいえ。「世界一難しい言語」という言い方自体に、あまり意味がありません。難しさは、学ぶ人の母語からの距離で決まるからです。英語話者にとって日本語やアラビア語が最難関であるのと対になる形で、日本語話者にとっての英語は最難関のグループに入ります。つまり「英語そのものが難しい」のではなく、「日本語と英語の組み合わせが遠い」のです。漢字を知っている中国語話者が日本語学習で近道できるのと、同じ理屈です。

RとLは、もう一生聞き分けられないのですか?

いいえ、改善できます。ただし、限界も正直にお伝えします。大人の日本語話者が、いろいろな話者・いろいろな単語の音声で「今のはRかLか」を当て続ける訓練をしたところ、聞き分けの成績が上がり、その効果が数か月後も残っていたという研究があります(Logan, Lively & Pisoni, 1991/Bradlow et al., 1999)。一方で、訓練や長い海外生活を経ても、ネイティブとまったく同じ水準まで届く例はまれだ、という報告もあります(Ingvalson et al., 2011/Tyler, 2020)。ですから、現実的な目標は「ネイティブの耳」ではなく「困らない耳」です。会話には文脈の助けもあるので、聞き分けの精度が上がれば、実用上の問題はほぼなくなります。コツは、聞き流しではなく、答え合わせのある聞き分け練習を、声や単語を変えながら重ねることです。

英語が話せるようになるまで、どのくらいかかりますか?

目標によって大きく変わります。FSIの約2,200時間は「仕事で専門的に使えるレベル」という、かなり高い到達点の数字です。日常会話が目標なら、そこまでの時間は要りません。必要な時間は、目標・方法・毎日どれだけ英語に触れるかで変わるため、一つの数字では言えないのが正直なところです。確かなのは、同じ100時間でも、週一回の詰め込みと毎日の積み重ねでは、残り方がまるで違うということです。総時間よりも、時間の使い方が効いてきます。

才能がないと、英語は無理ですか

いいえ。この記事で見てきたとおり、英語の難しさの大部分は、才能ではなく、日本語と英語の距離、そして学校で受けた訓練の種類で説明がつきます。距離が遠い以上、時間はかかります。しかし、時間をかければ届く、ということでもあります。伸び悩みの多くは、才能ではなく方法の問題です。音を後回しにする、触れる量が足りない、学習の間隔を空けすぎる。どれも、今日から変えられます。

子どもには、何歳から英語を始めさせるべきですか?

音の面では早いほど有利です。母語話者並みを目指す場合は、10〜12歳ごろまでの開始が一つの目安になるという研究があります(Hartshorne et al., 2018)。ただし、それより大事なのは続くかどうかです。嫌々の詰め込みで英語嫌いにしてしまうと、早く始めた有利さは消えてしまいます。歌や絵本や動画など、楽しく続けられる形で始めてください。詳しくは本文の「子どもなら簡単?大人だと手遅れ?」で紹介しています。

参考文献