近頃、ChatGPTなどの人工知能が話題になっています。それは翻訳だけではなく、エッセイなども書くことができることから、人工知能の学習・教育への影響に対する議論に関心が高まっています。機械翻訳が大きな進歩を遂げた今、お金と時間を使ってまで、外国語、特に英語を学ぶ理由はあるのでしょうか?
この記事では、英語を学ぶメリットと機械翻訳の限界について考えてみたいと思います(英語版の記事)。
目次
人工知能は英語で?
人工知能は英語で『Artificial Intellegience』と言います。『Artificial』は人工を意味し、『Intellegience』は知性や知能を意味します。
例えば、『Artificial flavor』は人工甘味料になります。『Machine intelligence』は機械知能になります。
『Artificial Intellegience』の発音:
まずは、マイクロソフトBing検索の人工知能に機械翻訳と外国語学習への影響について聞いてみました。
言語・英語を学ぶ理由をマイクロソフトBingの人工知能に聞いてみた
質問:翻訳者に代わって翻訳の仕事をするつもりですか?
人工知能の回答 (翻訳、 DeepL使用):
『いいえ、翻訳者の代わりになるわけではありません。翻訳者は、テキストやスピーチをある言語から別の言語に翻訳するスキルと専門知識を持つ人間のプロフェッショナルです。翻訳者は文化的、文脈的、領域的な知識を必要とする、複雑で、ニュアンスの異なる、専門的なテキストやスピーチを扱うことができます。また、正確性と明瞭性を確保するために、品質保証、校正、編集サービスも提供することができます。
Bing 2024
Microsoft Bing検索のチャットモードで、ウェブ検索を行い、異なる言語でクリエイティブなコンテンツを生成することができます。私は、ある言語から別の言語への単語、フレーズ、または文章の翻訳など、基本的な翻訳タスクでユーザーを支援することができます。ただし、翻訳の品質、正確さ、適切さを保証するものではありません。また、人間の判断力や創造力、感情などが必要な文章や音声は扱えません。翻訳者とAlは、お互いの長所と短所を補い合いながら、協力し合うことができるのではないでしょうか。
翻訳者は、Alのツールを使うことで、仕事のスピードを上げ、生産性を向上させ、リーチを広げることができます。翻訳者は、Alのツールを使うことで、仕事のスピードを上げ、生産性を向上させ、活躍の場を広げることができますし、Alのツールは、人のフィードバックによって、パフォーマンスを向上させ、失敗から学び、新しい状況に適応することができます。一緒に、ユーザーとクライアントに、より良いサービスを提供することができます。 』
現状では人工知能には基本的な翻訳しかできない模様です。機械翻訳にはまだまだ限界が存在します。特に文化やニュアンスの違いを正確に翻訳することは難しいです。機械翻訳は単語や文法の翻訳においては高い精度を持っていますが、表現の微妙な違いや文化的な背景を正確に伝えることは難しいです。そのため、外国語を学ぶことで、より正確なコミュニケーションが可能になります。同時に、翻訳機会が将来、どれくらい活躍できるか興味深いですね。
次に、外国語を学ぶ理由を聞いてみました。
質問:人工知能が翻訳してくれるのに、なぜ外国語を学ぶべきなのですか?
英語を学ぶメリットについて 人工知能の回答(翻訳、 DeepL使用):
言語を学ぶことは、単にある言語から別の言語へ言葉を翻訳することではありません。
言語を学ぶことで、以下のことが可能になります:1:その言語を話す人々の文化、歴史、価値観を理解する。
2:その言語を母国語とする人々と、より効果的かつ真正面からコミュニケートすることができます。
3:自分を表現し、他人を理解する新しい方法を学ぶことで、認知力、創造力、批判的思考力を養うことができる。
4:新しい市場、リソース、ネットワークにアクセスすることで、キャリアや学問の機会を増やすことができる。
5:その言語の文学、音楽、芸術、メディアの美しさ、多様性、豊かさを享受する。
人工知能(AI)は言葉を翻訳することはできますが、その背後にある意味、文脈、感情を翻訳することはできません。AIは、基本的なコミュニケーションには役立ちますが、より深い理解、感謝、つながりを手助けすることはできません。言語を学ぶことは、Alにはできない方法で、あなたの人生を豊かにすることができます。』
Bing 2024
Microsoft Bing 検索の人工知能は、上記に、複数の理由を挙げています。どれも正しい理由だと思いますが、他にもいい理由があります。
例えば、AI翻訳は、専門用語や特殊な文脈での正確性に限界があります。また、プライバシーやセキュリティの観点から、重要な情報を翻訳ツールに依存することはリスクが伴います。ですから、AIなしで外国語を理解すつ能力は欠かせません。
さらに、言語を学ぶことは認知力の向上に役立ち、認知症の予防や子供の脳の発育にも貢献する可能性があります。二つ以上の言語使う場合、言語を切り替える必要があります。この際に、脳の前頭葉の「エグゼクティブ機能」が強化されることが知られています。これは注意力や柔軟な問題解決能力の向上に関連している脳の部位です (Harvard Graduate School of Education, 2015)。
関連記事:バイリンガル教育とそのメリット
今から、文化、歴史、価値観を理解することが大切だということに注目したいと思います。AIは外国語を学ぶことで、その言語を話す人々の文化、歴史、価値観を理解することが可能になると述べています。しかし、なぜ大切なのでしょうか。答えは明らかではないと思うので、考えてみたいと思います。異なる文化、歴史や価値観の理解はお金やキャリアに結びつかなくても大切なことだと主張します。
『見えにくい』価値(実用性の少ない・無いもの)
実用性の少ないものは、『お金やキャリアに結びつかないもの、または、直接結びつかないのに関わらず、人生を豊かにするもの』と定義します。例えば、人は楽しみ、共有するために絵画を描きます。実用性の少ないものに対する価値観は、文化や個々によって異なりますが、その中には確かに「心の豊かさ」をもたらす要素が含まれていると思います。絵画や美術、音楽、詩、そして哲学や純粋数学などは、金銭的なリターンが少ないかもしれませんが、それらは人間の心を育むと同時に、社会や文化に深い影響を与えることがあります。
もちろん、絵画で裕福になる人もいますが、裕福になるために絵画を描く人はほとんどいません。なぜなら、裕福になることが目的ならば、他の道(ビジネスなど)を歩むからです。美術・芸術・学問(人文学や純粋数学)そのものに価値をおかないと、金銭的リスクを冒してまでアーティストや学者になろうとは思えません。
しかし、一枚の絵画や一篇の詩が人々にインスピレーションを与え、社会変革を促すこともあるでしょう。これは『実用性の少ないもの』が必然的に私たちの思考や価値観に影響を与え続けているからです。さらに、純粋数学の研究が将来的には実用的な科学技術に貢献する場合もあります。従って、実用性が直接的には見えなくとも、そのような活動や学問には間接的な価値があるはずです。
国際状況により、英語には実用性がありますが、実用性の少ない言語がほとんどです。特に、古典言語は研究以外に使うことがほとんどありません。しかし、多言語を理解する能力は、思考の柔軟性を高め、異文化理解を深める助けともなるでしょう。よって、言語学習においても、実用性だけでなく多角的な価値を考慮することが重要です。私たちが気づかないところで、その『実用性の少ないもの』が役立っているかもしれません。
多様性と異文化理解の重要性
世界はさまざまな違いで満ちています。ここでは、人種を超えた多様性について話します。それは、人種、文化、言語、宗教、そして考え方の違いを含みます。私は、この多様性がとても価値があり、人生を豊かにすると考えています。国際社会の中で、それぞれの文化、言語、価値観が独自の色を持ち、全体を楽しく、興味深く、豊かにしています。多様性を恐れたり、拒否したりする人もいますが、実際には多様性が相互理解や共感を深めます。どんな意見を持っていても、国際社会で生活するには多様性を受け入れるだけでなく、その価値を認めることが大切です。
多様性がもたらすのは単なる「違い」ではなく、「違いを通じた新しい可能性や視点」です。そのような視点は、問題解決に新しいアプローチを提供するだけでなく、人々が自分自身や他者について深く考えるきっかけを作ります。また、多様性のない世界は、豊かさや刺激に欠けた、平板で面白みに欠ける世界ではないでしょうか。
外国語を学ぶことは、違った視点を手に入れる方法です。異文化について本を読むのも大事ですが、実際にその違いを感じることとは違います。異なる背景を持つ人々と関わったり、外国を訪れることで、教養を深めるだけでなく、偏見や誤解を取り除くことができます。これは、それぞれの文化や価値観が長い歴史や環境、社会の影響を受けて作られてきたことを理解するのに役立ちます。また、一つの文化の中で生活し、偏った考え方や感じ方に慣れた人に新しい視点を提供することにもなります。
何より、異なる文化に触れることで、多様性に気づき、それを受け入れることが容易になります。これにより、日本にも様々な背景を持つ人が多くいることを認識するようになります。そうすることで、更に人を人として捉え、お互いを尊重することができるようになります。また、人の話を聞き、学び、理解しようとする姿勢は、人間関係において大切です。異なる文化や価値観を持つ人々と対話することで、相互理解を深め、協力の場が生まれます。異なる背景を持つ者同士が積極的に対話し、お互いを理解しようと努め、様々な体験を共有し、協力することは、人生を豊かにするのではないでしょうか。
AIが同時通訳を実現したら?
同時通訳が日常的に使えるようになれば、驚くほど便利に感じるでしょう。AIが文化的な微妙な意味や慣用表現、文脈を正確に理解して伝えることができると仮定しても、まだ問題は残ります。たとえ母国語に翻訳されても、自分でその言語を学んだ時と同じように、深く本質的に意味を理解できるでしょうか?言語を学ぶことで、その構造やリズムを内面化し、言葉の背後にある感情や文化的な背景、意図を把握することができます。このレベルの理解は、より深い繋がりと純粋なコミュニケーションを育みます。
例えば、AIが次のようジョークを翻訳するとします。「A Buddhist monk walks up to a hot dog stand and says, ‘Make me one with everything.’」これをAIが「仏教の僧侶がホットドッグ屋に行って『すべてと一体になりたい』と言った」と翻訳したとしましょう。この翻訳は表面的には正しいですが、ジョークの核心部分である「one with everything」が持つダブルミーニングを理解するためには、英語の文化的背景とユーモアの感覚が必要です。このフレーズは、ホットドッグの具材をすべて入れてもらうという意味と、仏教の教えである「一体感」を掛けた言葉遊びです。日本語の受け手がこのジョークを聞いても、この言葉遊びと文化的な背景を直感的に理解できず、ジョークの面白さを感じることは難しいでしょう。この例は、単に言葉の意味を理解するだけではなく、その背景にある文化や文脈を理解することの重要性を示しています。ですから、言語を通して、さまざまなことを体感する必要があります。翻訳するだけでは不十分です。
私は間違っているかもしれませんが、AIが私たちの脳を直接操作しない限り、翻訳されたメッセージを瞬時に深く理解することはできないと思います。もちろん、脳の操作はは道徳的な問題を引き起こします。私はAIが外国語学習を時代遅れにするために、脳を操作することを望みません。AIはコミュニケーションを助けることはできますが、新しい言語に没頭することで得られる深い理解や文化的共鳴を提供することはできません。したがって、AI翻訳ツールは便利で貴重ですが、言語学習の豊かで変革的な体験の代わりにはなりません。AI翻訳が経済的または実用的な理由で私たちの生活に深く浸透しすぎると、私たちは価値のあるものを犠牲にしてしまうかもしれません。また、AIには『実用性の少ないもの』の価値を本当の意味で理解することはできません。ですから、AIに価値判断を任せすぎると、私たちが本当に大切にすべきものを見失う危険性があります。AIは便利なツールではありますが、その限界を認識し、私たち自身の価値観や判断力を大切にすることが重要だと考えています。
ボーナス:英語を学ぶとゲルマン系とロマンス系言語が学びやすくなる
英語を知っていると英語に近い言語が学びやすくなります。
ゲルマン系:オランダ語・ドイツ語・ノルウェー語・スウェーデン語・デンマーク語など。
ロマンス系:フランス語・イタリア語・ポルトガル語・スペイン語・ルーマニア語など。
、主要言語の中で英語に一番近い言語はオランダ語だと言われています。二番目はドイツ語です。
まとめ:英語を学ぶ理由
英語を学ぶ理由やメリットは大きく分けて二つあります。
一つ目は実用性のある経済的理由です。それは人脈、英語試験合格や質の高い情報へのアクセスなど、社会的立場やキャリアの観点から役に立ちます。
二つ目は人格、考え方や人間関係などの理由です。それは、背景が異なる人たちと共存するだけではなく、お互いの視野を広げ、協力し、人生を豊かにする働きがあります。ほとんどの方は経済的理由に囚われ、同等に大切な考え方や人間関係の理由のことを忘れてしまいます。それは、経済的価値以外は抽象的で見えにくいからでしょう。しかし、それらは間接的に社会的立場やキャリアに貢献するかもしれません。また、経済的メリットがなくても、価値のあるものだと捉えることができます。外国語を習得すると、経済的メリットが訪れなくてもやって良かったなと思えるはずです。外国語を習得すること自体が誇るべきことであり、誇りに思えることが価値のある印です。
AI翻訳ツールは確かに便利で多くの場面で役立ちますが、外国語を学ぶことにはそれ以上の価値があります。文化理解、コミュニケーションスキルの向上、脳のトレーニング、キャリアの幅の広がりなど、英語を学ぶメリットはたくさんあります。AI技術が高まる中でも、外国語を学ぶことはますます重要になっています。このように、英語を含む外国語を学ぶ理由はたくさんありますが、学ぶ必要のある人がいる中、学ぶ必要の無い人もいるでしょう。しかし、必要性が無いからといって価値が無いわけではありません。自らの価値観、興味、人生の道筋を考えて、AIの時代に外国語を学ぶかを考えてみてください。
最後に、会話、読書、映画など、たくさんの楽しみが待っています。英語を楽しむことも忘れないでください。
関連ページ:言語学習のコンセプトに関する記事