目次
はじめに
英単語を覚えることは、言語学習において重要です。でも、英単語をどうやって覚えるのが一番効果的かについては、いろいろなアプローチがあります。今回は、細かい方法論ではなく、英単語学習の全般的なアプローチについて詳しく見ていきます。誤ったアプローチで学習すると、なかなか成果が出ません。実践的な方法は後ほど紹介します。最後に、英単語カードの学習の限界についても触れます。
英単語 覚え方 – 英単語学習のアプローチ
一般的なアプローチ
まず、昔からある単語学習法では、単語をリストで覚えることが一般的です。この方法は多くの単語を短期間で覚えるのに役立ちますが、単語を孤立して覚えるため、その使い方や文脈での意味を理解するのが難しいことがあります。
文脈のアプローチ
一方、文脈のアプローチでは、単語を実際の会話やテキストの中で学ぶことを重視します。Schmitt (2008) は、単語の意味だけでなく、その使われ方や文脈を理解することが重要だと述べています。文脈内で学ぶことで、単語をより深く理解し、長期的に記憶することができます。
文脈が大切な主な理由:文脈が重要である理由の一つは、新しい情報が既存の記憶に結びつきやすくなるためです。これは、既存の知識と新しい情報が関連付けられ、記憶の中で強固なネットワークが形成されるからです
英単語 覚え方 – 文脈学習について
Webb (2008)のメタ分析
Webb (2008) のメタ分析は、読み書きを通じた英単語学習の効果を評価し、言葉を文脈内で学ぶことの有効性を支持しています。この分析によると、読むことや書くことを通じて新しい単語を学ぶだけでなく、その単語の細かな意味や使用方法も理解できることが示されています。これにより、単語の記憶が促進され、実際のコミュニケーションでの使用が容易になります。
Nation (2001)の見解
Nation (2001) の著書では、さまざまな英単語学習方法についての研究を総合的に分析しています。彼は、単語を孤立して覚えるのではなく、文脈を通じて学ぶことの重要性を強調しています。これは、単語の意味だけでなく、その使用方法や文脈での意味も理解することで、語彙力が向上し、より自然な言語使用が可能になるためです。
Laufer (2005)の研究
Lauferの研究は、文脈内での英単語学習が学習者の理解力と記憶力にどのように影響するかを詳しく分析しています。彼は、文脈を通じて単語を学ぶことで、学習者がその単語をより深く理解し、長期的に記憶する能力が向上することを示しています。
Schmitt (2008)の研究
Schmittの研究によると、言語の入力(聞くことと読むこと)と出力(話すことと書くこと)の両方を通じて、新しい英単語を効果的に学習できることが示されています。実際の会話や文の中で単語を学ぶことで、その単語を使って自分の考えや感情を表現する方法を理解し、内面化することができます。これにより、単語の意味や使い方をより深く理解することが可能となります。
英単語 覚え方 – 英単語カード
英単語カードが短期的な試験などには役立ちますが、長期的な記憶の保持や実生活での応用には向かないことを支持する研究があります。SoderstromとBjork (2015) の研究は、英単語カードを含む、さまざまな学習方法の利点と限界について議論しています。
英単語カードは、暗記のための人気ツールです。以下の点で効果的です:
- 短期試験の準備: 英単語カードは、個々の事実の迅速な想起を助けるため、近い将来の試験のための情報を覚えるのに適しています。
- 自己テスト・クイズ:英単語カードを使って自己クイズを繰り返すことで、受動的な復習方法(例えば再読)よりも記憶保持が強化されます。
しかし、英単語カードにはいくつかの限界があります:
- 文脈的理解: 英単語カードは情報を孤立して提示することが多いため、これらの事実がどのようにより大きな文脈に適合するかを理解することをサポートしません。
- 長期保持: 研究によれば、英単語カードは短期的記憶を改善しますが、長期的な保持にはその効果が明確ではありません。英単語カードで学んだ情報は、定期的に復習し、広範な知識の枠組みに統合しない限り、時間とともに減少する可能性があります。
- 知識の深さ: 英単語カードは表面的な学習(暗記)に焦点を当てるため、より深い理解や批判的思考を必要とする複雑な主題には適していません。概念の統合や応用が必要な場合、より包括的な学習方法が必要です。
英単語カードの使い方
Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008)のリトリーバル・プラクティス(記憶から情報を引き出すための練習)に関する研究は、繰り返しテストすることが記憶保持を向上させるが、他の学習技術(例えば説明的質疑や自己説明)と組み合わせることが一番効果的だとされています。
英単語カードと文脈の組み合わせ:
- 方法の組み合わせ: 英単語カードを他のアクティビティ(例えば情報を自分の言葉で要約する、他人に教える、知識を実践シナリオに適用するなど)と組み合わせて使用します。
- 間隔反復法: 時間をかけて記憶を強化するために、間隔を空けて復習することが重要です。これは、英単語カードを増加する間隔で復習することを意味します。
- 文脈学習: 資料をさまざまな文脈で学びます。例えば、英単語カードの内容に関連する記事を読んだり、ビデオを見たりすることで、理解と記憶が深まります。特に、多読やシャドーイングなどとの組み合わせがおすすめです。
- +よく使われる英単語を優先的に学びましょう。
まとめ
今回取り上げた文脈のアプローチは、単語を実際の会話や文章の中で学ぶことで、その意味や使用方法を深く理解し、長期的な記憶に繋げる方法です。一方、英単語カードは短期的な試験準備には効果的ですが、長期的な記憶の保持や実生活での応用には限界があります。特に自己クイズのツールには有効ですが、情報を文脈内で理解し、深く記憶するには他の学習技術との組み合わせが必要です。学習者が長期的な英語の応用を目指す場合、方法の組み合わせや間隔反復法、文脈学習の活用をおすすめします。多読と単語カード(自己クイズ)の組み合わせをおすすめします。
参考文献:
- Karpicke, J. D., & Roediger, H. L. (2008). The Critical Importance of Retrieval for Learning. Science, 319(5865), 966-968.(Link)
- Laufer, B. (2005). Focus on Form in Second Language Vocabulary Learning. EUROSLA Yearbook, 5, 223-250. (Link)
- Nation, I. S. P. (2001). Learning Vocabulary in Another Language. Cambridge: Cambridge University Press. (Link)
- Schmitt, N. (2008). Instructed Second Language Vocabulary Learning. Language Teaching Research, 12(3), 329-363. (Link)
- Soderstrom, N. C., & Bjork, R. A. (2015). Learning Versus Performance: An Integrative Review. Perspectives on Psychological Science, 10(2), 176-199. (Link)
- Webb, S. (2008). Receptive and Productive Vocabulary Learning: The Effects of Reading and Writing on Word Knowledge. Studies in Second Language Acquisition, 30(3), 297-320. (Link)