フォニックスの目的 – 読み書きは当たり前?

フォニックスとは?

フォニックスとは、アルファベットの文字と音の関係を学び、英語の読み書きを効果的に習得するための教授法です。この方法により、子どもたちは単語を自力で読み解く力を身につけ、読解力や語彙力を向上させることができます。フォニックスは発音向上のためだけではなく、全体的な読み書き能力の向上を目的としています。

この記事は、フォニックスの具体的な説明ではなく、その誤解やその意図・目的、そして効果に焦点を当てて紹介します。最近、『フォニックス 意味 ない』とGoogle検索をしている方が多いようです。また、『フォニックス 意味 ない』と主張する記事も見かけました。しかし、その学習の目的を理解すれば、フォニックスの価値と有効性が見えてくるはずです。フォニックスは、英語を読む力を効果的に育てるための学習法です。正しい方法で学習すれば、子どもたちは英単語を自力で読み解く力を身につけ、読解力や語彙力を大いに向上させることができます。本質を理解し、その意図や目的を正しく把握することで、その効果を最大限に引き出すことができます。

読み書きは当たり前?

世界には7000くらいの言語があるのですが、3072くらいの言語に書き言葉がないことを知っていましたか (参考)。これは、言語がどれほど多様であり、書き言葉が発展するのに、特定の状況が必要だということを示しています。『読むことが当たり前のスキルではない』ということを考えると興味深いですね。第一言語の書き言葉は当たり前のように学んだかもしれませんが、慣れていない第二言語は同じようにはいきません。特に、日本語が第一言語の場合、文法的にも音域的にも異なる英語を学ぶことはより難しくなります。

人は健康である限り、歩行や呼吸のように視覚と聴覚の能力を生まれつき備えています。そして、これらの視覚と聴覚の機能を活用して、周囲の物事や抽象的な概念を覚えていきます。しかし、文字を書いたり読んだりするスキルは初めから備わっているわけではありません。さらに、読み書きを学ぶことが難しいのは、書き言葉が抽象的な記号を使用するからだと考えられます。

話し言葉も、音を抽象的に組み合わせた一種の暗号と言えますが、子供たちは学校で特別な指導を受けなくても、日常の生活環境でこの暗号を解読し、言語を習得していきます。しかし、読み書きのスキルは自然に身につくものではありません。文字を読むためには、視覚と聴覚の脳の機能が密接に連携しなければなりません。これは、既存の脳回路に新しい回路を構築する過程であると言えます。そのため、読み書きを習得するには明確な指導が必要であり、書かれた文字を正しい音に結びつけ、それから意味を理解するスキルを養う必要があります。フォニックスという方法は、アルファベット式の言語における読み書きのスキルを構築するために利用されています。

言語学習には専門的な用語が多く登場するので、先に説明します。

見慣れない用語

音素:

音素とは、言語の最小単位の音声のことです。
例えば、『t』は英語の音素(phoneme)の一つです。
英語には約44の音素があります。これは、地域や方言によって若干の違いがあるため、正確な数は地域によって異なります。

こちらのリンクから英語の音素を聴いてみてください。

音節:

音節には、少なくとも1つの母音の音(文字ではなく、音ですので注意してください)が含まれていなければなりません。

例えば、fantastic には三つの音節があります。
1:『fan』
2:『tas』
3:『tic.』

母音の文字の無い例:
『Fly』は音節が一つあります。
1:『y
『y』は子音の文字ですが、ここでは母音の音になっています。

音素認識能力:

音素認識能力とは、音素を聞き取る能力です。また、話し言葉に含まれる音を聞き取り、話し言葉や音節が音素の連続から成り立っていることを認識することです。

音韻認識能力:

音韻認識能力とは、言語の音構造を聞き取り、操作する能力ことです。音韻認識を育めば、韻を踏んだり(例えば、mouse と house )、音素・音節を混合・分解することができます。
音韻認識は音素認識を含む包括的な用語です。ですから、音韻認識には音素認識が含まれています。

音韻認識の具体例:

  • 韻の認識: 「mouse」と「house」が韻を踏むことを理解する。
  • 音節の分解: 「wagon」を「wa + gon」の2つの音節に分解する。
  • 音素の合成: 「b」と「a」と「t」を合わせて「bat」にする。

このように、音韻認識能力は言語の音のパターンや構造を理解し、操作する力を育むために重要です。

スタールとマーレン(Stahl & Murray, 1994)は、音韻認識能力が発達することで、子供たちの読解力が大幅に向上することを示しています。特に、音節や韻の認識が発達することで、単語の構造を理解しやすくなり、読解力が強化されます。

フォニックス (Phonics)

音と記号(アルファベット文字)の関係を学ぶ教授法であり、読み書きの脳回路を構築するために使われる教授法です。フォニックスは音韻認識でも音素認識でもありません。ただし、フォニックス学習をするには音素認識が必要です。

(参考:Kame’enui, et. al., 1997、Yopp 1992)

グラフェム (Graphemes)

ここでは、説明のために発音記号(例えば、/æ/ など)使いますが、それらを覚える必要は全くありません。

グラフェムとは?

グラフェムは、音素を表す文字や文字の組み合わせのことです。英語においては、単一の文字(例: ‘a’, ‘b’, ‘c’)や文字の組み合わせ(例: ‘ch’, ‘sh’, ‘th’)がグラフェムとなります。グラフェムは、書かれた言葉とその音声の間の橋渡しをする役割を持っています。

グラフェムと音素の関係:

グラフェムと音素は密接に関連していますが、同じものではありません。例えば、英語の単語「cat」では、3つの音素 /k/, /æ/, /t/ に対応する3つのグラフェム ‘c’, ‘a’, ‘t’ があります。一方、「ship」では、4つの音素 /ʃ/, /I/, /p/ に対応する3つのグラフェム ‘sh’, ‘i’, ‘p’ があります。このように、1つの音素が複数の文字で表されることもあります。英語には約44の音素に対して、それらの音素を表現するためのグラフェムが約250あります。例えば、『fun』 と 『phone』の『f』と『ph』はそれぞれ /f/ の音素になります。

グラフェムの具体例:

  • 単一文字のグラフェム: ‘a’ は音素 /æ/ や /eɪ/ を表します。
  • 二重文字のグラフェム: ‘sh’ は音素 /ʃ/ を表します。
  • 三重文字のグラフェム: ‘igh’ は音素 /aɪ/ を表します。

グラフェムの理解は、フォニックス学習において重要なステップです。音素を正確に識別し、それを対応するグラフェムに結びつける能力が、効果的な読み書きの基盤となります。

これから、フォニックスの本来の目的を紹介します。

フォニックスの目的とは?

発音について:

フォニックスは本来、発音トレーニングを意味するものではありません。フォニックスの目的が発音向上だと主張するブログなどは、本質を理解していない可能性があります。また、「フォニックスに意味がない」と主張する人たちも、多くの場合、その目的を誤解しています。英語を学ぶためにフォニックスは必須ではありません。もちろん、フォニックスを使わなくても英語を学ぶことは可能です。しかし、要点はどのメソッドを使うべきかです。遠回しに効率の悪いメソッドを使うか、科学的根拠のあるフォニックスを使うかの選択です。

例えば、こんな主張をしているブログの記事を見つけました。この主張は間違っています。❌

フォニックスは結論から言うと発音を学ぶ上ではとても大事な学習法になります。フォニックスの読み方を学ばないと所謂ジャパニーズイングリッシュと呼ばれるカタカナ読みの発音になってしまいます。

とあるフォニックスについてのブログ記事

英語圏の子供たちは通常、フォニックスを用いて発音を学ぶのではなく、日常生活の中で自然な形で発音を習得しています。読み書きに興味がない場合、フォニックスなしで発音やリスニングを学ぶことができます。また、フォニックスをしていないからカタカナ発音になるという上の主張は間違っています。理想的な学習プロセスは、音素認識と発音のスキルを身につけた後にフォニックスを学ぶことですが、時間の制約やその他の理由から、これらのスキルを並行して学ぶ場合もあります。

音素認識は重要なスキルですが、フォニックスを学ぶ際には、ネイティブと同等の発音力やリスニングスキルを持つ必要はありません。その学習過程において、音素を正確に発音する機会が多く提供されるため、発音は自然に向上します。要するに、フォニックスを学ぶこと自体が、発音の向上に関わるということです。

フォニックスは主に英語などのアルファベット式の言語で使用される教授法であり、文字(グラフェム)と音(音素や音節)を結びつけるのに役立ちます。しかし、主要な目的は、読み書きスキルの構築と言語理解の向上です。言語教育において、フォニックスは有用なツールの一つであり、適切に組み込まれることで効果的な学習をサポートします。

しかし、フォニックスにはどんな目的と効果があるのでしょうか。

読書の流暢性:

流暢性(りゅうちょうせい)とは、情報を適切に、素早く、数多く処理する能力のことです。そして、読書の流暢性を育むことがフォニックスの主な目的です。しかし、なぜ、読書の流暢性が大切なのでしょうか。

文字を読むことは、音と意味が秘められた暗号を解くことです。この作業は、脳にとって情報処理の複雑なプロセスを要求します。特に、慣れない外国語を読む場合は、脳がより多くのリソースを使うことになります。

脳の観点から見ると、流暢性が向上することで、書き言葉を読み解く処理が軽減され、その余力は情報の意味理解に向けられます。この結果、読書の内容理解が向上し、読書の充実感が増します (参考:Kuhn, M.R., & Stahl, S.A, 2000、Laberge, D., & Samuels, 1974)。さらに、フォニックスを学ぶことで、70%以上の単語を読むことができるようになり、多量で多忙な単語の覚えごとから解放されることが確認されています(参考:Bay Area Reading Task Force、1997)。

フォニックスを用いずに読み書きを習得することは可能ですが、これは遠回りな学習方法と言えるでしょう。なぜなら、「単語の丸覚え」では、言語の基本的な構造や発音規則を理解することができないため、効率の悪い学習につながります。また、脳科学の視点からの研究によれば、単語を分解して発音するフォニックス教授法の方が効果的であることが示されています。ブルース・マッキャンドリス博士は、この点について次のように述べています。

『単語を丸ごと覚えるのではなく、文字と音の関係、つまりフォニックスに重点を置いた初級読者は、読書に最も適した脳の領域で活動が活発になることがわかりました。つまり、読解力を身につけるためには、「CAT」という単語を暗記させるよりも、「C-A-T」と音素に分解して発音させる方が、より最適な脳回路を刺激し、将来その単語に出会ったときにも、その指導法の違いが読解力に影響を与えます。この画期的な研究は、読書のための特定の教授法が神経回路に直接影響を与えるという、初めての証拠を提供するものです。 』

ブルース・マッキャンドリス博士,
(Yoncheva.,et. al., 2015)

フォニックスは、文字と音の関係を理解し、音素を発音する能力を養うことによって、読書の流暢性を向上させる助けとなる教授法であることが、科学的に支持されています。

ホール・ランゲージ指導について

フォニックスと対比される学習法として、ホールランゲージ(Whole Language)があります。フォニックスが単語を個別に分解して学ぶ方法であるのに対し、ホール・ランゲージは言語を全体として捉える、覚える方法です。ホールラン・ゲージでは発音に重点を置かず、発音と文字の対応を重視するフォニックスとは異なります。ホール・ランゲージを支持する人々の中には、「フォニックスは学んでも意味がない」と考える人も少なくありませんでした。

しかし、1998年に米国学術研究会議が発表した報告書「幼児期の読解困難の予防」において、フォニックス指導がembedded-phonicsやホールランゲージ指導よりも効果的であると結論づけられました。この包括的な報告書は、読解研究と指導の専門家の意見の一致に基づいており、子供たちの読解スキルの発達における明確なフォニックス指導の利点を強調しました​ (NICHD)​​ (Reading Rockets)​。2000年に発表されたナショナルリーディングパネルの報告書もこれらの結論を裏付けてます。フォニックス指導が幼稚園から6年生までの子供たちの読解能力を大幅に向上させることを強調しています。 (Reading Rockets)​​ (National Academies)​。

英語のグレイディット・リーダー

3文字ブレンディングの練習・デモビデオ

読むことの重要性:

フォニックスは読むことへの近道であり、読むことを容易にする目的があります。読書を通じて語彙を増やすことは確かに重要です。しかし、読書の主要な目的は単語の習得だけでなく、内容理解、読んだものを深く考えること、そして著者から読者へのコミュニケーションを可能にすることです。さらに、読むことを容易にすることは、読書を嫌いになる悪循環を防ぐのにも役立ちます。読書自体に価値があると思いますが、社会生活において不可欠なスキルでもあります。読書は学習や情報収集の主要な媒体である限り、読書に対する姿勢や態度が生涯学習のために大切です。子供たちには読書の楽しみや価値を理解し、極的に読書力を向上させてほしいものです。そのために、英語学習においても、不要な障壁を取り除き、読書と学習を楽しむ環境を提供することが重要です。また、英語学習においても、読書能力は学習の幅を広げ、総合的な英語力を向上させる役割を果たします。したがって、英語学習においても、読書へのアクセスを容易にし、読書習慣を育むことは英語の上達だけでなく、学習の幅を全面的に広げます。

期待される効果:

  • 読書の流暢性を高める。
  • 多量・多忙な暗記から解放される。
  • 読むことに前向きになる可能性が高くなる。
  • 発音が良くなる(主に副産物)。

始める前に必要なこと:

  1. ネイティブのような発音は必要ありませんが、音の聞き取りと伝わる発音が大切です。フォニックスの学習において、ネイティブスピーカーのような発音力を要求するわけではありません。しかし、他の人が話す音を聞き取り、自分が発音することができることは重要です。正しい発音は、フォニックスの効果的な学習に役立ちます。
  2. 文字やアルファベットは音を表しているという認識が必要です(Juel, 1991)。フォニックスは、文字やアルファベットが言語の音を表現する手段であることを理解することから始まります。文字と音の対応を理解することは、言語学習の基本です。
  3. 音韻認識能力が重要です。言葉は音素(音との最小単位)から構成されていることを理解することがフォニックスの学習に不可欠です(Haskell., et. al., 1992)。音素とは、言語の音の基本的な要素であり、フォニックスではこれらの音素を理解し、識別する能力が求められます。
  4. 英語には通常(分類の仕方や地域によって多少異なることがありますが)44の音素がありますが、日本語には約22の音素があります(Kavanagh, 2007)。この点を理解することは、フォニックスの学習において、英語と日本語の音韻体系の違いを認識するのに役立ちます。異なる音韻体系に慣れることは、フォニックスの効果的な適用において大いに役立つでしょう。

これらの要点を理解し、準備することによって、フォニックスの学習が効果的かつスムーズに進行すると思います。

続けて読む: 英語学習においてのカタカナとローマ字の弊害について。

『フォニックスは意味ない』という主張への反論:

ルールに当てはまらない例外がある

英語学習において、フォニックスのルールがどれだけの単語に適用できるかは重要です。「フォニックスのルールが単語全体の7割程度に当てはまる」と聞いたとき、「7割もカバーできる」と前向きに捉えるか、「たったの7割しか適用できない」と捉えるかは、人によって異なるでしょう。しかし、この「7割」というデータには、頻出単語から稀な単語まで幅広く含まれています。

たとえば、Chthonic, Ghoti, Eudaemonia, Yclept, Gainsay などの単語は、ルールに当てはまらない例外的なものですが、これらは日常的に使うことの無い単語です。
そのため、頻出単語に焦点を当てて単語の適用数を計算することで、より実用的なデータが得られます。
2000語の最頻出単語のリストを使って計算してみました。

 分析結果の手順と割合計算

1. フォニックスルールの分類

  • 基本的なフォニックスルール
    • CVC
    • CVCC
    • CCVC
    • CV

-> Cは子音のこと;Vは母音のこと

  • 高度なフォニックスルール
    • 母音チーム(例:ea、ou、ai)
    • R制御母音(例:ar、er)
    • 二重母音(例:oi、oy)
    • サイレント e
  •  例外的な単語
    • フォニックスルールに当てはまらず、暗記が必要な単語。

2. 分析手法

  • 単語の選定:GSLから2000語をリストアップ。
  • 分類:それぞれの単語を音声構造に基づき3つのカテゴリに分類。

3. 全体の単語分析結果

  • 基本的なフォニックスルールに従う単語:44%(880単語)
  • 高度なフォニックスルールに従う単語:40%(800単語)
  • 例外的な単語:16%(320単語)

頻出単語リストに基づくと、84% の単語がフォニックスのルールに適用できます。この結果は、普段使う単語の大部分がフォニックスのルールに従うことを示しています。したがって、英語学習においてフォニックスのルールを理解し、適用することは、発音や単語理解の向上に大いに役立つでしょう。

フォニックスの一つのメリットは、英単語を暗記するだけではなく、音のルールを理解することで、多くの単語を効率的に習得できる点(暗記する苦労から解放)です。実際、頻出単語2000語の分析によると、84% の単語がフォニックスのルールに従っています。つまり、日常的に使用する単語は、フォニックスのルールを適用することでスムーズに学習できます。

例外的な単語は確かに存在しますが、それは全体のわずか16%程に過ぎません。この16%のためにすべての単語を丸暗記するのでは非効率です。まずはルールに基づいて84%を効率よく学習し、残りの例外を少しずつ覚えていくほうが、学習の負担ははるかに軽くなります。たとえ70%でも、フォニックスは多くの単語に適用できる強力な学習学習法です。しかし、84% という結果は、フォニックスを学ぶ価値がさらに高いことを示しています。これだけの割合でルールが適用できるのであれば、英語学習においてフォニックスを無視する理由はありません。

フォニックスは、英語の発音やスペルに関する「地図」のような役割を果たします。たとえ例外があっても、ルールがあることで学習者は未知の単語にも対応できるようになり、自信を持って英語に取り組むことができます。丸暗記に頼るのではなく、ルールを活用して学習することで、英語学習がより効果的で、楽しいものになるでしょう。

下のグラフは、フォニックスのルールに当てはまらない不規則な単語の使用頻度を比較しています。

このグラフは、不規則な単語(Chthonic, Ghoti, Eudaemonia, Yclept, Gainsay, could, through)の使用頻度を時系列で示しています。グラフを見ると、「could」と「through」は、1950年代以降、他の不規則な単語に比べて遥かに高い使用頻度を持っており、特に「could」は2000年代以降急激に増加しています。一方で、ChthonicやGhotiなどの例外的な単語は使用頻度が極めて低く、ほとんど変わらないことがわかります。

このことは、英語学習において、不規則な単語であっても頻出する単語は学習の優先度が高いことを示しています。「could」と「through」などの頻出する不規則な単語は、フォニックスルールに当てはまらないため、「サイトワード」としての暗記が必要ですが、それ以外の稀な不規則単語に関しては、日常的な学習において大きな影響を与えないことが分かります。「サイトワード」とは、見ただけで瞬時に意味と発音を理解できるように暗記すべき単語のことです。特に「could」や「through」のような頻出する不規則な単語は、日常会話や読解に頻繁に登場するため、正確に覚えることが不可欠です。これにより、フォニックスルールに当てはまらない単語も、スムーズに理解できるようになります。

文章を読めるようにはならない

もちろん、フォニックスだけで文章がすらすら読めるようになるわけではありません。しかし、フォニックスは文章を読むための基礎を築く、重要な学習法の一つです。

上記で述べたように、フォニックスを学ぶことで認知的な負担が減り、読みの流暢さが向上します。これにより、新しい文章に出会った際に、文字を読む時間を短縮し、その分、意味や文法に集中しやすくなります。

また、フォニックスを学んでいない子どもたちは、新しい単語に出会うたびに、その単語の発音を調べる必要があります。この過程は一度で覚えきれないことが多く、何度も調べる手間が増えてしまいます。これが英語学習において負担を大きくする要因です。

さらに、多くの単語を読めるようになると、意味がわからなくても、その単語を使って質問することができます。例えば、「participate」という単語を見たとしましょう。すぐに書き留められなくても、後で誰かに「participateってどういう意味?」と尋ねることができたり、曖昧でも「participate?」とメモしておくことができます。

参考文献:

  • Adams, M. J., Foorman, B. R., Lundberg, I., & Beeler, T. (1998). The elusive phoneme: Why phonemic awareness is so important and how to help children develop it. American Educator, 22(1-2), 18-29.
  • Bay Area Reading Task Force (1997). A reading-writing-language source book for the primary grades. San Francisco, CA: University School Support for Educational Reform.
  • Haskell, D. W., Foorman, B. R., & Swank, P. R. (1992). Effects of three orthographic/phonological units on first-grade reading. Remedial and Special Education, 13, 40-49.
  • Juel, C. (1991). Beginning reading. In R. Barr, M. L. Kamil, P. B. Mosenthal, & P. D. Pearson (Eds.), Handbook of reading research (pp. 759-788). New York: Longman.
  • Kavanagh, B. (2007). The phonemes of Japanese and English: A contrastive analysis study. Aomori University of Health and Welfare8(2), 283-292.
  • Kame’enui, E. J., Simmons, D. C., Baker, S., Chard, D. J., Dickson, S. V., Gunn, B., Smith, S. B., Sprick, M., & Lin, S. J. (1997). Effective strategies for teaching beginning reading. In E. J. Kame’enui, & D. W. Carnine (Eds.), Effective Teaching Strategies That Accommodate Diverse Learners. Columbus, OH: Merrill.
  • Kuhn, M.R., & Stahl, S.A. (2000). Fluency: A review of developmental and remedial prac tices (2-008). Ann Arbor, MI: Center for the Improvement of Early Reading Achievement, University of Michigan.
  • Laberge, D., & Samuels, S. (1974). Toward a theory of automatic information processing in reading. Cognitive Psychology, 6, 293-323.
  • Stahl, S. A., & Murray, B. A. (1994). Defining phonological awareness and its relationship to early reading. Journal of Educational Psychology, 86(2), 221-234.
  • Yoncheva, Y. N., Wise, J., & McCandliss, B. (2015). Hemispheric specialization for visual words is shaped by attention to sublexical units during initial learning. Brain and language145, 23-33.
  • Yopp, H. K. (1992). Developing Phonemic Awareness in Young Children. Reading Teacher, 45, 9, 696-703.

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