英語の学習は、子どもが言葉を吸収するのに最適な時期である幼児期に始めることが理想的です。特に言語に関しては、この時期に多くの音を聞き、それを真似することで、言語の基礎を身につけることができます。家庭での英語学習は、子どもが英語に触れ、楽しみながら学ぶことができる最善の方法の1つです。この記事では、家庭での乳幼児の英語学習の進め方の注意点を主に解説します。
目次
家庭での乳幼児の英語学習の進め方
『聞き流し』に注意
多くの方は、英語の「聞き流し」を取り入れることを考えがちですが、単に英語を流すだけでは、十分な学習効果は期待できません。「聞き流し」とは、英語の音声や歌、物語などを背景音として流す方法です。言語の習得には、音や言葉への意識が大切です。音と物や概念を関連づけることで音に意味を持たせることができます。
例えば、英語の色を聞き流すのではなく、子どもたちが『Green』 を聞いた時に、『これは緑色の事(絵などを通して)だよ』、などと具体的な意味を示しましょう。乳幼児はまだ言葉の意味や概念を完全に理解していないため、特定の音やリズム、アクセントに敏感になることが必要です。この意識を高めるためには、積極的な参加と反復が欠かせません。乳幼児は体験とともに学ぶ傾向があり、実際に言葉を使ってコミュニケーションを取る機会が非常に大切です。聞き流しのみを頼りにするのではなく、子供と一緒に英語で遊ぶ、歌う、話すなどの活動を通じて、音や言葉への意識を高めることが効果的な学習に繋がります。
英語学習は特別な時間を設ける必要はありません。一日の生活の中に自然に英語を取り入れましょう。例えば、朝起きたときや食事のとき、遊んでいるときなど、日常的に英語を聞ける環境を作ることが大切です。また、親子で一緒に英語に触れる時間を作ることも大切です。親が一緒に楽しむことで、子どもも楽しみながら英語学習に取り組むことができます。また、親が楽しそうに英語を使っている様子を見ることで、子どもも英語に興味を持つようになります。
もっと能動的な学習方法として、「アクティブリスニング」が有効です。これは、聞いている内容に意識を集中させ、それに反応する練習をすることです。例えば、「Simon Says」(サイモンが言ったことをやろう)といったシンプルなゲームから始めてみましょう。英語で簡単な指示を出し、子どもがその指示に従うことで、理解を高めることができます。また、英語で語られる短い話を聞かせ、その話のシーンを描かせることで、子どもたちの想像力を刺激し、言語に対する関心を深めることができます。
英語の環境づくり
家庭で言語豊かな環境を作ることは、子供の英語学習にとって重要です。以下に、家庭で言語豊かな環境を作るためのいくつかの方法を紹介します。
家族で英語を学ぶ・話す: 家族全員が英語を話すことで、子供は日常的に英語に触れる機会を得ることができます。食事や入浴の時間など、日常生活の中で英語を話す習慣を作ることが重要です。また、保護者が英語に興味を持つことはとても大切です。
英語の絵本を用意する: 家庭には英語の本や雑誌を豊富に用意しましょう。子供が興味を持つテーマの本を選ぶことで、英語学習がより楽しくなります。また、英語の絵本を定期的に読み聞かせることで、子供の語彙や文法の理解力を向上させることができます。英語での読み聞かせが難しい場合、絵本とセットになったオーディオ・ブックを一緒に読み・聴くことをおすすめします。
英語の音楽や映像を活用する: 子供は音楽や映像に敏感です。英語の歌やアニメなどを取り入れることで、子供は英語の音やイントネーションに触れることができます。さらに、英語の音楽や映像を通じて、子供のリスニングスキルを向上させることができます。
親の学習への意識と積極性
親の英語学習への関与は、子どもの学習動機づけに大きな影響を与えます。子どもたちが英語を学ぶ上で、親が積極的に参加し、サポートすることは不可欠です。子どもが英語を使用するとき、正しい発音や文法の使用を手助けすることで、親は子どもの言語習得を効果的に促進することができます。また、親自身が英語を使ったコミュニケーションを楽しむ姿は、子どもにとって強力な模範となります。親が子どもに読み聞かせをする、共に英語の歌を歌う、あるいは一緒に英語で話すゲームをすることで、自然な環境の中で言語能力を育てることができます。
このような日常的な関わりは、子どもが英語を学ぶ上での自信と興味を育てるとともに、家庭での英語使用を自然なものとして確立させます。親が学習プロセスの中で忍耐強くサポートし、子どもの興味や疑問に応じて適切な指導を行うことは、言語習得をより楽しいものにし、一生続く好奇心を植え付けることにつながります。
また、子どもたち(特に乳幼児〜小学生)の全面的な発達と学業の成功には、親の積極的な関与が不可欠であることが、50件以上の研究から明らかになっています1。これらの研究により、親が子供の教育にどのように関わるかが、学校での成績だけでなく、子供の自尊心や社会性の発達にも深く影響していることが理解されています2。
親の関与は、家庭内での学習支援に始まり、教師とのコミュニケーション、学校イベントへの参加といった形で多岐にわたります。例えば、宿題を手伝う行為は、子供との接点を増やすだけでなく、学習への姿勢を肯定的に形作る機会を提供します。また、学校と家庭の橋渡し役として、教師との対話を通じて、子供の学校生活への理解を深めることができるのです。
乳幼児の英語学習教材の選び方と使い方
乳幼児向けの英語教材を選ぶ際のポイントは、子どもが楽しんで使えるかどうかです。また、教材は子どもの年齢や発達に合わせて選ぶことが大切です。具体的な教材としては、音声付き絵本や英語の歌が入ったCD、英語のアニメや幼児向け映画などがあります。
教材を使っての学習は、子どもが興味を持てるように楽しく進めることが大切です。例えば、絵本を読むときは、親が一緒になって楽しむようにしましょう。また、英語の歌を聞くときは、一緒に歌ったり踊ったりすることで、楽しみながら英語のリズムや音に触れることができます。
年齢別の英語学習法
0歳~1歳半:音に親しむ
0歳から1歳半の乳幼児は、まさに音に対して非常に敏感な時期にいます。この時期の子どもは、言葉の意味を完全には理解していなくても、異なる音や音のリズムに反応します。そのため、英語の歌や絵本の読み聞かせを取り入れることで、子どもの耳を英語の音に慣れさせることができます。特に、リズミカルな歌や子守唄は、子どもの心を捉えやすく、言語のリズムやメロディーを感じ取らせるのに適しています。音や言葉への意識をこの早い段階から養うことで、後の英語学習の土台をしっかりと築くことができます。
2歳~3歳:遊びを通じて学ぶ
2歳から3歳の子どもは、遊びが学びの主な手段となります。英語を取り入れた遊びやアクティビティを紹介することで、子どもは自然に英語に触れる機会を持つことができます。遊びの中で英語の言葉やフレーズ意識的に出会うことで、子どもは音や言葉への意識を高め、その意味や使い方を自然と学びます。親子で英語での手遊び歌や簡単なゲームを一緒に楽しむことで、英語学習が楽しいものとして子どもの心に残るでしょう。音や言葉への意識は、この段階で深化し、より高度な言語スキルの発展に繋がります。
オンライン教材の活用
オンライン教材を使用すると、自宅でいつでも英語学習に取り組むことができます。また、映像や音声を使った教材は、子どもの興味を引きつけやすく、楽しみながら学ぶことができます。もちろん、YouTubeなどの動画サイトにもたくさん無料の教材がありますので、積極的に活用しましょう。
オンライン教材を選ぶ際には、子どもの年齢や興味に合わせて選ぶことが大切です。また、教材の内容が豊富で、子どもが楽しむことができるものを選びましょう
オンライン教材は便利ですが、子どもたちのスクリーン時間にも注意を払う必要があります。 スクリーン時間とは、テレビ、コンピュータ、スマートフォン、タブレットなどのデジタルデバイスの画面を見て過ごす時間を指します。これには学習用の活動も含まれますが、過度なスクリーン時間は睡眠障害や肥満、注意力の問題につながることあります。 特に、夜は絵本などの物理的な教材を使いましょう。
こちらのブログでは、様々な教材のレビューを行なっているので、ご覧ください。
高額な教材と未使用のリスク
教育においても、高価なエクササイズ器具が使われずに終わるように、高額な教材が未使用で終わるケースは少なくありません。特に、数年分の教材を一括で購入するようなオンライン・システムや教材に対しては、100万円以上もの大金を投じるケースがあります。このような投資が結果を出さないと、精神的、経済的ストレスは大きくなります。
教材を使わなかったことで生じる失望感は、子供だけでなく親にも影響します。特に、その失望感が子供に伝わると、学習意欲の減退や、最悪の場合英語嫌いにつながる可能性もあります。
教材選びにおいては、事前に詳細な調査を行い、可能ならばトライアル版を試用することが推奨されます。これによって、教材が子供に合っているかどうかを事前に確認でき、無駄な出費と失望を避けることができます。
教材を選ぶ際には、その実用性と段階性も考慮することが重要です。すぐに使えるものであるか、そして子供の成長に合わせて使えるかどうかを確認してください。高額な教材が必ずしも良いわけではありません。家庭のライフスタイルに合った教材を選ぶことが、長期的な学習成功につながります。
高額な教材に投資する前に、その価値とリスクをしっかりと評価する必要があります。特に、高い教材を買っても使用しないというケースは多く、その失敗は子供に対するモチベーションや英語学習に対する意欲にも悪影響を与える可能性があります。教材選びは慎重に行い、子供のニーズと合致したものを選ぶことが重要です。
物理的な教材とデジタル教材のバランス
物理的な教材とデジタル教材を組み合わせた学習方法は、幼児期の英語学習において効果的なバランスを提供します。物理的な教材、例えば実物の絵本やカードゲームは、手触りやページをめくる感覚を通じて子供たちの感覚を刺激し、学習体験を豊かにします。一方、デジタル教材は音声認識やインタラクティブなゲームを通して、学習への参加を促し、反応速度を速めることが可能です。これらのツールは、発音の正確さを改善し、リスニングと発音のスキルを磨く上で有効です。例えば、デジタルアプリケーションを使用して子どもが「猫」の画像をタップすると、「cat」という単語が発音され、これが音と単語認識の橋渡しをします。このように、両方の教材を適切に統合することで、学習経験はより立体的で実り多いものになり、幼児が英語に触れる機会を最大化できます。
楽しさや自主性の大切さ
乳幼児に英語を学ばせたいと考える時、親として大切なのは、子供の興味を引くことです。無理強いするのではなく、子供が「楽しい!」と感じるペースで進めることが重要です。将来を通して、学ぶことに前向きになれることが貴重だと思います。子供が自発的に学ぶ興味を持つようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
子どもに英語を学ばせる際には、無理強いせずに、子どものペースに合わせて進めることが大切です。子どもが英語学習を楽しむためには、子ども自身が興味を持つことが重要です。英語学習は一夜にして結果が出るものではありません。長期的な視野で取り組むことが大切です。子どもの成長とともに、学習内容も段階的に進めていきましょう
また、外国人に対して英語で話すように幼児を無理に促す行為は、逆効果になる可能性があります。特に、このような状況が幼児にとって無理やストレスを感じるものであれば、英語に対する負のイメージや嫌悪感を抱くリスクが高まります。
言語学習は、楽しさや自主性が大切です。外国人に英語で話すように強制すると、幼児は「英語=義務やプレッシャー」といった負の印象を持つ可能性があります。その結果、自発的に言語を学ぶ意欲が減少するかもしれません。親や保護者が期待する成果が出ない場合、その失望感は意外と子供にも伝わります。このような精神的なプレッシャーが子供にかかると、言語学習に対する興味を完全に失う可能性もあります。
もし幼児が外国人と英語で自然に話せる機会があれば、それは積極的に評価されるべきです。しかし、そのような機会を無理に作り出すのではなく、子供が自然に興味を持って参加できるような環境を提供することが重要です。
最後に、子どもたちの年齢に関係なく、学習の間違いを失敗と捉えず、間違いは学ぶ機会だと捉えましょう。
参考:
- Hill, N. E., & Tyson, D. F. “Parental involvement in middle school: a meta-analytic assessment of the strategies that promote achievement.” Developmental psychology, 2009, 45(3), 740-63.
The Significance of Parental Involvement in the
Development in Infancy
↩︎ - Shao, M., He, W., Zhao, L., & Su, Y. S. (2022). The Influence of Parental Involvement on Parent Satisfaction: The Moderating Effect of Parental Educational Level and the Number of Children. Frontiers in psychology, 12, 752802. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.752802 ↩︎